MIKU WATASE 写真集

着物とロケーション

渡瀬未来さんは都内のクラブの看板ホステスで、FOTOWORKSでは1冊目のフォトブック制作以来、続けてお付き合いをさせて頂いている。

彼女のフォトブックは、お店へ来店されるいわゆる常連さんに配られる写真集で、ホステスとしてのプロモーションの一環である。

今回の撮影はスタジオではなくロケーション撮影をメインにする形になったので、折角なら今まで撮影したことがないスタイルということで和装を提案した。

今や我々の生活は洋装中心となり、着物を始めとする和装はイベント事やアニバーサリー的な所で用いられる「特別な」装いとなっている。渡瀬さんをよく知る常連さんが写真集を見たとき、その「特別感」によって興を添える事ができれば正解だろうし、本人にとっても楽しめる撮影になるのではないかと思った。
 



 
牡丹の総柄で描かれた淡いピンク色の小紋は、濃紫の雪輪を散らした帯をスッキリと合わせ、ロケーション先となった新緑とのコントラストが初夏らしい爽やかな姿となったし、大ぶりの花々を浮かび上がらせるような色の取り合わせで描かれた、今の日常では少し取り入れるのに躊躇するかも知れないであろうアンティークな着物も彼女によく似合っていた。

東京の街の風景に佇むと何処となくノスタルジックで面白い。遊び心がふんだんに盛り込まれた縞を寄せ合わせたようなモダンなデザインの着物には、強い水色の半襟と花で埋めつくすかのような大ぶりの髪飾りを合わせその出立ちは艶やかだ。
 


 
撮影終了後、渡瀬さんご自身も撮影をとても楽しめたと話していた。

自身の着たい色やイメージを考え、それらをどのように自己表現へ繋げるかの試行錯誤は「見せる」を職業にされている渡瀬さんにとって刺激的だったのだろう。渡瀬さんは沢山の着物を何度も着替える大変な撮影だっただろうに非常に良いモチベーションを保って撮影に挑んでいた。

装いは身近にあるセルフプロデュースのうちの1つだと思うし、ロケーション撮影はそのオブジェクトを更に彩る演出を可能にする。セルフプロデュースが上手く構築されている時の撮影はカメラマンも楽しいし、写真集として個性のある良いモノが作れると思う。

写真集の制作費は100部前後とはいえ安くはない。ホステスの写真といえば店頭パネルに飾る宣材写真ばかりだが、『自分』というブランドを伝えることがいかに重要かを渡瀬未来さんは熟知しているのだろう。
 

photographer 高野勝洋