RISEスーパーフェザー級王者 小宮山工介選手

格闘家とヒーロー

 小宮山工介選手はポジティブで強い。
 
試合実績やご自身で発信されているTwitterでもその片鱗を伺い知ることができるが、特筆すべきは2017年にあった鳴門市での人命救助のエピソードだろう。
 
彼は当時、この少し前の試合で負傷をし、そこからの復帰戦を2ヶ月先に予定していたという。格闘技選手としては非常に大変な時期だったと思う。
 
そんな折、修行の一環で少林寺拳法の師を訪ねる予定だった道中で先述の事故現場に遭遇し、2台の事故車から人を救助されたそうだ。しかもそのうちの一台はロックされたトラックの窓を肘打ちで割った上で行っており、当然小宮山選手ご本人も10針ほど縫うケガを負われている。その後の記者会見では「自分が強くなるために格闘技をやってきたが、その格闘技の技が人命救助に使用できて格闘技をやっていて本当に良かったと思いました。」と清々しく述べている。試合後のヒーローインタビューとは趣きが異なった会見ではあるが、人命救助こそヒーローのなせる技と言えるだろう。
 
今日の平和な日本において、格闘技の強さは非日常的なものかも知れない。だが、その強さの為の鍛錬は心身に行き渡り、いつしか自身を省みる事なく人の為に尽力できるようなヒーローをも生み出すのかも知れないなと、小宮山選手を見ているとそんな期待が湧いてくる。

 

 


 
小宮山選手の宣材写真の撮影は今回で二度目になるが、とってもフランクで話しやすく、常に謙虚な姿勢は驚かされる。試合のリング上で見せる人を寄せ付けないほどの気迫はどこから生まれてくるのだろうかと不思議な気持ちになるくらい、小宮山選手の表情はいつも優しい。
 
アスリートや格闘家の宣材写真はその才能ゆえに何処となく非日常的になりがちだが、それは日常を感じさせるリアルさよりも、その人達の才能や努力によって築かれた自力がファインダー越しに映るからだろう。
 
改めて小宮山選手の宣材写真を見返すと、こちらを貫くような真っ直ぐの眼差しを向けている。格闘家として強さを追求する為の前進を疑わない姿だ。
 
凡人であるカメラマンは前進する為の力や強さを得ようと踠いてしまうなと、改めてその強さの違いを痛感するばかりである。
 

photographer 高野勝洋

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