鉄板焼き「おはこ」

テイクアウト用の料理メニュー写真

 新型コロナウィルス感染拡大防止の為、不要不急の外出自粛が日常化された。その影響で、ウーバーイーツや出前館などのフードデリバリー業者が急増し、テイクアウト用料理メニューの写真撮影を依頼する飲食店(バーチャルレストラン)も同時に増えている。
 
今回、東京・清澄白河にある鉄板焼き 『 おはこ 』さんの料理メニュー写真の出張撮影の依頼を受けたが、同時に料理メニューの広告写真について改めて考えさせられた。
 
もちろん、今迄はそんなことで悩んだりはしなかったし、カメラマンは自身の嗜好や感情に左右されることはない。カメラマンとしては料理人が作る素晴らしい料理を余す事なく伝える写真を撮れば良かった。写真を見たお客さまがワクワクするようなメニュー、集客に繋がるような広告、それらをつくる事がカメラマンの仕事だと思っていた。
 
しかし、今は、少し事情が変わったように思える。
 

例えば、既にお店に居て、そこで食事をしようとしてる人になら料理メニューに写真は蛇足だったのかもしれない。文字だけのメニューを眺めて、自分の腹と脳であれこれとイメージをし、食事を選ぶお客さまの楽しさはTVドラマでおなじみの井之頭五郎がこれでもかと伝えている。実際、そういう楽しみ方があるのは事実だと思う。
 
また、店側からすると、仕入れや色んな事情でいつもメニュー写真に載せている物をそのままの形で提供出来るとは限らない。もちろんプロだから臨機応変、どうにかはされるだろうが、でもお客さまが「メニュー写真と全然違ったw」なんてネット上で書かれる不安がつきまとう。
 
その一方、会食等でお店を探す場合は、料理メニューの写真は非常に頼りになる。沢山の人をもてなさなければいけない時に主賓や上役の人の苦手な食材は避けた方がベターだろうし、同じメニューでも、その店がどんな料理を用意してくれるのか視覚で確認できる事は大きなメリットである。
 
あるいはご年配の方や子供を連れて外食するとき。メニューに写真があれば、様々な不安を取り除きながら料理を吟味できるだろう。
 
しかし、今は、お祝い事などのイベントや家族との休日で必須であった外食は控えなければならない。お店独自の雰囲気を味わいながら食事を楽しむことはできなくなり、STAY HOMEが日常化されつつある。お客様にとっては、この鉄板焼き「おはこ」さんのようにシェフが目の前で食材を焼いてくれるパフォーマンスも、食材がジュワーっと焼かれる音も、その香ばしい匂いも味わえない状況だが、お店の経営者としては営業スタイルを変えなければコロナ禍で生き残れないのである。
 
コロナ禍は、カメラマンにとって料理メニュー写真のメリットってなんだっけな、と改めて立ち止まって考えてみる起点になったのだ。

自宅のテーブルに『美味しい』という花を添えて欲しい

新型コロナ感染拡大とそれに伴う飲食店の営業自粛要請によって、多くの有名店がテイクアウトでの販売を余儀なくされた。フードデリバリーの魅力は、プロの料理人が作った料理を自宅で食べられるということだ。かつて、店頭で何時間も並ばなきゃ食べることができなかった有名店の料理が自宅に運ばれてくるわけだから、ある意味では贅沢と言っていい。
 
カメラマンとしては、お客様にテイクアウト用料理メニューの写真を眺めて楽しんでもらいたいと思う。今日の気分、家族の嗜好など各料理を注文する動機は様々だが、料理メニューの写真から食卓のイメージを膨らませて、自宅のテーブルに『美味しい』という花を添えて欲しいと思う。
 
もちろんこの新型コロナが一日も早く終息する事が1番の願いであるが。
 
店舗とお客との距離は今、アクリル板以上の距離がある。その距離を料理写真と言うツールが埋められれば幸いである。
 

photographer 高野勝洋

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